お気軽にご相談ください!
股関節の動きは6種類|屈曲・伸展など基本動作と日常生活での役割

股関節の基本的な構造と動きの特徴
股関節とは
股関節は人体の中で最も大きな関節の一つで、骨盤と大腿骨をつなぐ重要な部位です。この関節は球関節と呼ばれる構造をしており、骨盤側にあるお椀のような窪み(寛骨臼)に、大腿骨の先端にあるボール状の部分(大腿骨頭)がはまり込む形でできています。この構造は、ボールとソケットの関係にたとえるとわかりやすいでしょう。寛骨臼は大腿骨頭を包み込むようになっており、関節の安定性を保つために深いくぼみを持っています。この精巧な組み合わせによって、股関節は体重を支えながらも自由度の高い動きを実現できるのです。
3次元で稼働する関節の特性
股関節の最大の特徴は、前後・左右・回旋という3つの軸で動く三次元の動きができることです。屈曲・伸展(前後の動き)、外転・内転(左右の動き)、外旋・内旋(ひねりの動き)という6方向の動きが可能で、これらが複合的に組み合わさることで、歩く、しゃがむ、立ち上がるといった複雑な動作を可能にしています。この多彩な動きこそが、他の関節にはない股関節の特性といえるでしょう。
体重を支えながら多彩な動きを実現する仕組み
股関節は荷重関節として体重を支える役割を担っています。歩行時には体重の3~4.5倍、階段昇降では6.2~8.7倍もの圧迫力が股関節に加わるといわれています。このような大きな負荷がかかりながらも、球関節という安定した構造によって関節を保護し、滑らかな動きを維持できるのです。寛骨臼が大腿骨頭を深く包み込む構造は、まさにこの負荷を分散させるための仕組みといえます。
股関節が体にとって重要な理由
股関節は下肢と骨盤をつなぐ部位として、立つ・歩く・座るといったすべての基本動作の要になっています。この関節に問題が生じると、歩行はもちろん、更衣や靴下の着脱、階段昇降といった幅広い日常生活動作が制限されてしまいます。体を支え、動かし、バランスを保つという複数の役割を同時に果たす股関節は、健康的な生活を送るために欠かせない関節なのです。
#股関節の構造 #球関節 #寛骨臼と大腿骨頭 #荷重関節 #3次元の動き
股関節の6方向の動きと可動域

股関節の基本的な6つの動き
股関節は前後・左右・回旋という3つの軸で動く関節ですので、屈曲と伸展、外転と内転、外旋と内旋という対になった6方向の動きができます。これらの動きが組み合わさることで、歩く・座る・しゃがむといった複雑な日常動作が可能になっているわけです。それぞれの動きには正常な可動範囲があり、その範囲内でスムーズに動けることが理想的といえます。
各動きの可動域と使われる場面
屈曲は脚を前に曲げる動きで、可動域は125度とされています。階段を上るとき、椅子に座るとき、膝を胸に近づけるときなど、日常生活で最も頻繁に使われる動作です。この動きには腸腰筋や大腿直筋といった筋肉が関わっています。
伸展は脚を後ろに引く動きで、可動域は15度程度です。歩行時の蹴り出しや走るときの推進力を生み出す重要な動きですが、日常生活ではあまり大きく使われません。この動きが弱くなると歩幅が狭くなってしまうこともあるようです。
外転は脚を外側に開く動きで、可動域は45度です。歩行時に片足立ちになる瞬間のバランス保持に関わっており、中殿筋や小殿筋が働いています。内転は脚を内側に閉じる動きで、可動域は20度とされています。脚を揃える動作で使われ、骨盤底筋とも連動して姿勢の安定に関わります。
外旋は脚を外側に捻る動きで、可動域は45度です。歩行や走行時の骨盤の回旋運動をサポートする役割があります。内旋は脚を内側に捻る動きで、可動域は45度とされています。重心の安定性を向上させ、腰痛予防にも関わるといわれています。
股関節の可動域一覧
動きの方向 | 可動域角度 | 主な使用場面 |
---|---|---|
屈曲(脚を前に曲げる) | 125度 | 階段昇降、着座、しゃがむ動作 |
伸展(脚を後ろに伸ばす) | 15度 | 歩行の蹴り出し、走行時の推進 |
外転(脚を外に開く) | 45度 | 片足立ち時のバランス保持 |
内転(脚を内に閉じる) | 20度 | 脚を揃える、姿勢の安定 |
外旋(脚を外向きに捻る) | 45度 | 歩行・走行時の骨盤回旋 |
内旋(脚を内向きに捻る) | 45度 | 重心の安定、腰痛予防 |
#股関節の6方向 #可動域 #屈曲と伸展 #外転と内転 #外旋と内旋
股関節の動きに関わる主要な筋肉

屈曲に関わる筋肉
股関節を前に曲げる屈曲動作には、腸腰筋が主動作筋として働いています。腸腰筋は大腰筋と腸骨筋を合わせた筋肉群で、腰椎から骨盤の内側を通って大腿骨小転子に付着する深層の筋肉です。大腰筋は腰椎全体に付いているため、腰のS字カーブを保持する姿勢維持にも重要な役割を果たします。腸腰筋に加えて、大腿直筋も股関節の屈曲に協力的に働き、歩行や走行の際に脚を前方に振り出す動作で活躍しています。大腿筋膜張筋も股関節外側から補助的に屈曲に作用し、脚の向きを調整する役割も担っています。
伸展に関わる筋肉
股関節を後ろに伸ばす伸展動作では、大殿筋が最も強力に作用します。大殿筋は人体で最大の単一筋であり、腸骨・仙骨・尾骨から起こって大腿骨の殿筋粗面に停止する筋肉です。この筋肉は股関節伸展時に最も強く収縮し、重力に対して姿勢を保持する抗重力筋としても知られています。大殿筋に次いで、ハムストリングも股関節の伸展に協調的に働きます。ハムストリングには半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋長頭があり、これらは股関節と膝関節の両方をまたぐ二関節筋であるため、股関節の伸展作用を持っています。
外転と内転に関わる筋肉
股関節を外側に開く外転動作には、中殿筋と小殿筋が主に働きます。中殿筋は大殿筋の上部に位置し、小殿筋はその深層にあります。これらの筋肉は外転だけでなく、歩行やランニングで片足立ちになる瞬間に骨盤が傾かないよう調節する重要な役割を果たしています。一方、股関節を内側に閉じる内転動作には、内転筋群が働きます。内転筋群は大腿の内側に位置し、骨盤底筋とも連動して姿勢の安定に関わっています。
外旋・内旋に関わる筋肉
股関節を外側に回す外旋動作には、深層外旋六筋と呼ばれる筋肉群が主に作用します。この外旋六筋は梨状筋、上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋の6つで構成され、股関節深層部に位置して股関節の安定性や運動に重要な役割を果たしています。内旋動作には中殿筋や小殿筋の前部線維が関わり、歩行時の骨盤の回旋運動をサポートしています。
#股関節の筋肉 #腸腰筋 #大殿筋 #中殿筋 #外旋六筋
日常生活・歩行での股関節の複合的な動き

歩行時の股関節の連動した動き
歩行を単なる前後の動きと捉えがちですが、実は股関節では複雑な3次元の動きが連続して起こっています。前に振り出した足が地面に着地する瞬間、股関節は内旋の動きをしており、その直後に体が前方に移動する際には伸展と内転が同時に生じます。そして体重が足部に乗ってくると、股関節は外旋方向へと切り替わり、地面を力強く蹴り出すための準備に入るのです。このように内旋から伸展・内転を経て外旋へという一連の動きが滑らかに連動することで、私たちは効率的に歩くことができています。
座る・立つ動作での股関節の働き
椅子に座る動作では股関節の屈曲が必要になり、腸腰筋や大腿直筋が働いて脚を曲げながら体を下ろしていきます。反対に立ち上がる際には、屈曲した股関節を伸展させるために大殿筋とハムストリングが強く働きます。この伸展の動作がスムーズにできないと、腰や膝に余計な負担がかかってしまうことがあります。長時間座っていると股関節の前側にある腸腰筋が縮んだ状態で固まってしまうため、立ち上がる際に伸展がしづらくなることもあるようです。
階段昇降での股関節の複雑な動き
階段を上る際には、股関節の屈曲で脚を高く持ち上げ、その後に大殿筋による強力な伸展で体を押し上げます。この時には股関節の屈曲角度が85度程度必要とされています。階段を降りる動作では、さらに大きな可動域が求められ、屈曲角度は105度程度まで必要になります。降段時には中殿筋が骨盤を安定させながら、大腿四頭筋が膝の急激な屈曲を防ぐために遠心性収縮を行っています。
足部と股関節の連動メカニズム
股関節と足部は体の両端に位置しながら、互いに連動して働いています。足が地面に着地した直後、足部は内側に倒れるプロネーションという動きをしますが、その際に股関節も同様に内旋します。蹴り出しの時には足部が外側に倒れるスピネーションという動きをし、股関節も外旋へと切り替わります。この連動性があるからこそ、私たちは安定した歩行ができているといえます。
複合運動としての股関節の重要性
股関節は単一の方向だけで動くことはほとんどなく、常に2つ以上の動きが組み合わさって機能しています。屈曲しながら内旋する、伸展しながら外旋するといった複合的な動きによって、日常のあらゆる動作が可能になっているのです。この複合運動の質が低下すると、姿勢の崩れや他の関節への負担につながることがあります。
#歩行時の股関節 #複合運動 #足部との連動 #階段昇降 #股関節の連動性
股関節の動きを改善するストレッチ方法

屈曲の筋肉を伸ばすストレッチ
股関節の前側にある腸腰筋が硬くなると、骨盤が前傾して反り腰になりやすくなります。腸腰筋のストレッチでは、片足を前に踏み出して上半身を軽く起こし、足を縦長に広げた姿勢をとります。この時に腹筋に力を入れて背中が反るのを防ぐことがポイントです。自然な呼吸で20秒程度キープし、反対側も同様に行いましょう。
太ももの前側にある大腿直筋のストレッチは、横向きに寝て下の足を曲げ、上側の足先を持ってお尻に近づけます。足を体の後ろ側に少しずつ引いていく際、腹筋に力を入れて背中が反るのを防ぎながら20秒程度キープするとよいでしょう。
伸展の筋肉を伸ばすストレッチ
お尻の大殿筋が硬くなると、骨盤が後傾して背骨のカーブが減少してしまうことがあります。大殿筋のストレッチでは、椅子に座って片足を反対の太ももに乗せて4の字を作ります。背筋を伸ばしたまま体を前に傾けることで、お尻の筋肉を効果的に伸ばせます。
太ももの裏側のハムストリングのストレッチは、仰向けに寝て片足にタオルをかけてゆっくりと上に引き上げます。背中や肩は床につけたまま、膝は曲がっていてもよいので無理のない範囲で行いましょう。ハムストリングのストレッチは骨盤の傾きにも影響を与えるといわれています。
動きが制限される原因
股関節の動きが制限される大きな原因の一つに、骨盤の前傾や後傾があります。骨盤が前傾すると屈曲の筋肉が短縮して反り腰になり、後傾すると伸展の筋肉が短縮して背骨のカーブが減少します。長時間座っている生活では腸腰筋が縮んだ状態で固まりやすく、立ち上がる際に股関節の伸展がしづらくなることもあるようです。
日常でできる可動域維持法
日常生活で股関節の可動域を維持するためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
- 適度に立ち上がって歩く時間を作る
- 定期的にストレッチを行う習慣をつける
- 座っている時間を減らす工夫をする
- 苦手な動作や硬い筋肉を個別に改善する
- すべての動きができることを目標にする
専門家への相談が必要なケース
次のような症状が出てきたら、専門家への相談を検討しましょう。
- 歩く際に痛みが出る
- 特定の方向に動かない
- 動きの制限が徐々に強くなっている
- 立ち上がるときに痛みを感じる
- ストレッチをしても改善が見られない
股関節の変形や軟骨の減少などは画像でないとわからないため、動きが悪く痛みが出るのを単に体が硬いせいだと考えて強く伸ばすと、さらに負担がかかってしまうことがあります。
#股関節ストレッチ #腸腰筋ストレッチ #ハムストリングストレッチ #骨盤の傾き #可動域改善
まとめ
股関節は球関節という構造を持ち、屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋という6方向の動きができる重要な関節です。歩行時には体重の3~4.5倍もの負荷がかかりながら、複雑な3次元の動きを連続して行っています。日常生活では座る・立つ・階段昇降など、あらゆる動作で股関節が使われており、その動きは足部とも連動しています。
股関節の動きには腸腰筋、大殿筋、中殿筋、ハムストリング、外旋六筋など多くの筋肉が関わっています。これらの筋肉が硬くなると骨盤の前傾や後傾を引き起こし、股関節の可動域が制限されてしまいます。適度な運動とストレッチによって可動域を維持することが大切です。歩く際に痛みが出る、特定の方向に動かないといった症状がある場合には、専門家への相談を検討しましょう。
引用元
https://hip-society.jp/general/type/about/
https://www.tokyo-hip-joint.clinic/treatment/symptoms/
https://www.fukuoka-mirai.jp/orthopedics/565/
https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20221125-01.html
https://tarzanweb.jp/post-239097
https://ananweb.jp/categories/wellness/68780
https://www.mcdavid.co.jp/sportmed_anatomy/hipjoint/
https://www.styleb.co.jp/seminar/note/hip-extension-muscle/
http://clindsc.com/basic/basic_1-5-22.html
https://www.mcdavid.co.jp/column/takahashi/vol2/
https://1post.jp/7456
https://www.stroke-lab.com/news/14218